無期転換ルールを確認しましょう

皆さんの会社では、契約社員やパート社員で、雇用契約の終了が明記された「有期契約」の従業員の方はいませんか?仮に、該当する従業員の方がいて、「何となく更新を重ねている」場合、既に「無期転換ルール」に該当する方がいらっしゃるかもしれません。

この「無期転換ルール」とは平成25年(2013年)4月1日に改正労働契約法が施行されました。そして概要は、以下となっています。

同一の企業との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間に、契約期間が3年の場合、1回目の更新後の3年間に無期転換の申込権が発生します。有期契約労働者が企業に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立します(使用者は断ることができません)。

上記の記載にある通り、無期転換の申込みがあった場合、企業側から断ることはできません。仮に、企業等の財政が悪化している場合でも、その理由だけでは有期雇用を終了させることができないのです。よって、企業等は「その前に雇止めを実施する」ように、ルール化しているところもあります。しかし、無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません。

また、有期契約の満了前に使用者が更新年限や更新回数の上限などを一方的に設けたとしても、雇止めをすることは許されない場合もあります。よって、慎重な対応が必要です。

そして、参考となる裁判があります。

グリーントラストうつのみや事件 宇都宮地裁 令和2年6月10日

  • 公益財団法人の非常勤嘱託職員Aが、契約更新の上限5年に達した。
  • しかし、公益財団側は平成30年3月末に雇止めを行った。

→市側は財源悪化を理由に人員整理するよう指導していた。

  • Aは雇止め後、無期転換の申込を行った。
  • そして、Aは「雇止めは無効、無期転換の確認」を認めてもらおうとし、裁判を起こした。

そして、裁判所は以下の判断を下したのです。

  • 雇止めは無効とした。
  • 雇止め後に申し込んでいた無期転換を認めている。

この裁判を詳しくみていきましょう。

裁判所は、この雇止めに関して、整理解雇と同様の手続きが必要と判断しました。
そして、「整理解雇の要件を適用できているか?」を判断したのです。

具体的には

  • 人員整理のため、雇止めを行う必要性の重視
  • 雇止め回避努力の有無・程度
  • 雇止め者の選定
  • その手続の妥当性に関する審査

についてです。

しかし、財団は援助団体である宇都宮市からの指導を受け入れ、人員整理的な雇止めを実行したのです。これは、決定過程において雇止めを回避するための努力はもとより、Aについて、雇止め者として選定することやその手続の妥当性について何らかの検討を加えた形跡は全く認められなかったのです。

これらの事情を合わせ考慮すると、人員整理を目的とした雇止めには、客観的な合理性はもとより社会的な相当性も認められず、したがって、雇止めに特段の事情は存在しないと判断したのです。そして、雇止めは無効、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認したのです。これにより、無期転換も認められてたのです。

この裁判から学ぶことは、

  • 有期雇用契約の更新管理を実施し、更新する場合には面談等を行い、更新の意味を確認する。
  • 更新の有無について、基準を持って対応すること
  • 無期転換に該当する有期雇用契約者についての期日管理を行う。

等です。

仮に、有期雇用者について、更新の拒絶をすること自体は、法律違反ではありません。

そこには更新しない理由が「しっかり」と存在し、プロセスを経て対応することが重要です。

事例の裁判でも、「通算契約期間内に当該有期労働契約の更新を拒絶したとしても、それ自体は格別不合理な行為ではない」としています。一番やってはいけないことは、「何となく時期が来たら更新している」ということです。この場合、いきなり「更新拒絶」となった場合、整理解雇の要件に該当する可能性もあり、ハードルがとても高くなってしまう場合もあるからです。