最低賃金の落とし穴

最低賃金の改定は毎年10月の初旬ぐらいに行われますが、正確に算出するには、手当等の差し引きを行わないと正確に換算できないのです。皆さんの会社では、最低賃金の改定をチェックしていますか?最低賃金制とは、最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度を定めたものです。会社側は、その最低賃金額以上の賃金を従業員に支払わなければならないのです。仮に、最低賃金額より低い賃金を従業員、会社の合意で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。したがって、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。

また、最低賃金が適用されるのは、原則として事業場で働くすべての従業員であり、パート、アルバイトといった雇用形態は関係ありません。

最低賃金は2種類あり、地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金となっています。

  • 地域別最低賃金:各都道府県に定められている、産業や職業の別を問わず、都道府県内の事業場で働くすべての従業員に適用
  • 特定(産業別)最低賃金:都道府県内の特定の産業について適用されているものと、全国を適用地域として特定産業について決定されるものと2つがある

なお、会社は地域別と特定(産業別)の両方が同時に適用される場合、高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。そして、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。さらに、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。

最低賃金の対象となる賃金については、原則として毎月支払われる基本的な賃金に限定されています。具体的には、以下のものを除いた賃金となります。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
  • 所定労働時間を超える時間に対し、支払われる賃金(時間外割増賃金等)
  • 所定労働日以外の日の労働に対し、支払われる賃金(休日割増賃金等)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金で、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金等)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

そして、最低賃金は時間給で表記されます。そのため、時間給の場合はそのまま比較して、日給の場合は1日の所定労働時間で除して時間給に換算して比較します。月給の場合も月給を1か月の平均所定労働時間で除して、時間給に換算して最低賃金と比較します。したがって、最低賃金の対象となる賃金に算入するもの、しないものを確認して、時給をチェックしましょう。

さらに、一般の従業員と労働能力などの点から、最低賃金を一律に適用することが適当ではない場合について、都道府県知事の許可を得て適用除外とすることが認められています。

具体的には以下となります。

  • 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
  • 試用期間中の者
  • 職業能力開発促進法に基づく職業訓練を受ける者のうち一定の者
  • 所定労働時間が特に短い者
  • 軽易な業務に従事する者
  • 断続的労働に従事する者

最低賃金は毎年変わり、金額とアップ率が注目されがちです。ただ、これだけのルールが法律で定められているので、このことを意識して、最低賃金への対応を行ってください。もう一度お伝えしますが、最低賃金を守らないと、罰則があります。罰則となると、業務に影響することがほとんどです。公共工事のストップや、業務停止命令等、その影響は大きくなるでしょう。さらに、メディア、特に地方紙などにも取り上げられることも多く、影響は大きいでしょう。