健康診断の費用負担について

今回は、「健康診断の費用負担について」を解説します。

皆さんの会社では毎年「健康診断」を実施していますか?健康診断は、会社に実施義務、従業員には受診義務が課せられています。そして、通達(昭47・9・18基発602号)で、「健康診断の費用については、法律で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然事業者が負担すべきものである」としています。健康診断等の実施に当たって、費用負担をどうすみ分けるのか5つのパターンについてみてみましょう。

  1. 定期健康診断における費用負担
    定期健康診断は、労働安全衛生法66条1項、労働安全衛生規則44条によって実施が義務付けられています。よって、定期健康診断の法定項目にかかる費用は、すべて会社側の負担とするのが基本です。併せて、法定された有害な業務で働く労働者のための健康診断である特殊健康診断にかかる費用も、会社側の負担となります。
  2. 雇入れ時の健康診断における費用負担
    従業員の新規雇用で、健康診断を行う必要があります(安衛則43条)。雇入れ時の健康診断は、入社後に健康診断を実施して、会社負担とするケースと、診断書の提出を求めて、本人負担とするケースがあります。入社後に雇入れ時の健康診断を実施する場合、費用は会社負担となります。診断書の提出を求める場合は、入社する従業員の負担とするケースもあるということです。ただし、健康診断の実施は法律で義務付けられているので、領収書等を徴求して会社負担とするのがのぞましいでしょう。
  3. 定期健康診断に伴うオプション検査における費用負担
    法定項目については、会社負担が基本ですが、オプション検査を実施する場合は、従業員の個人負担となります。胃カメラ・乳がん検査・子宮頸がん検査等のオプション検査の受診は、法定されていないことから、受診費用は原則「個人負担」となります。しかし、産業医が就業判定のために、オプション検査の結果が必要とした場合等は会社負担とすべきと考えます。個人負担に関しては、安全衛生委員会等で労使の合意に基づき、議事録に残したうえで規定化しておくことが望ましいでしょう。
  4. 人間ドックにおける費用負担
    人間ドックは検査項目が多岐にわたること等から、定期健康診断として代用可能となっています。その際、法定以外の項目は受診が必須ではないため、費用は個人負担でも問題ありません。ただ、自治体や健康保険組合等の独自の補助制度もあるため、会社が一部負担する制度等を導入するケースもあります。その際は、安全衛生委員会等で労使間にて負担に関する条件について定義し議事録に残す、あるいは規定化しておくと、公平な管理が可能となります。
  5. 再検査における費用負担
    定期健康診断の実施義務は企業にありますが、再検査の受診勧奨は努力義務となっており、従業員の受診義務も原則ありません。しかし、企業には「安全配慮義務」(労契法5条)があります。本人が受診義務はないとして再検査を受けない場合においても、健康診断結果で健康上のリスクがある従業員が病を発症した場合、企業側が何もしていなければ、安全配慮義務違反の可能性が大です。さらに、産業医が再検査を条件に就労の可否を判断した場合は、会社は安全配慮義務に基づき、費用負担したり、再検査日に有給で休んでもらう等の配慮することが必要となります。また、特殊健康診断で「有所見(異常あり)」となった場合は、義務として再検査が必須となります。この場合、費用は当然会社負担となります。

それから「健康診断の受診時間分の賃金はどうなる?」という事もよくご質問をいただきます。
健康診断は、健康確保を目的として事業者に実施義務を課したものです。だから、業務遂行との直接の関連において行われるものではありません。そのため、一般健診の受診時間の賃金は労使間の協議によって定めるべきものでしょう。厚労省の見解では、円滑な受診のためには、「受診に要する時間の賃金を事業者が支払うことがのぞましい」としています。また、特殊健診に関しては「所定労働時間内に行う」のを原則としています。

このように法律、通達で決まっていることがあるので、みなさんの会社でも先にルールを決めておくが大切なのです。