副業・兼業に対する会社のリスクについて

近年、副業や兼業に注目が集まっていますが、皆さんの会社では、従業員の副業や兼業を認めていますか?なぜ、副業・兼業が注目されているかというと、政府が推奨しているからです。ただし、皆さんの会社が副業・兼業を認めた場合、様々なリスクがあることも事実です。

たとえば、次のようなリスクがあります。

  • 知的財産権の侵害
    副業や兼業により、自社の製品やサービスと競合する可能性があります。特に、従業員が自社の技術やノウハウを使用して、競合する製品やサービスを開発する場合、知的財産権の侵害になる可能性があります。そうなれば、会社の信頼性やブランド価値が損なわれることもあります。
  • 勤務意欲の低下
    副業や兼業により、従業員が本業に対する熱意や責任感を失う場合があります。また、本業に時間的余裕がなくなり、業務の遅れやミスが発生することがあります。
  • 疲労やストレスの増加
    兼業や副業による負荷が増加し、疲労やストレスが生じる可能性があります。これにより、生産性やモチベーションが低下する可能性があります。
  • 社外秘情報の漏洩
    副業や兼業の関係上、従業員が競合他社と接触する場合、社外秘情報の漏洩リスクがあります。例えば、顧客情報や製品の仕様などが漏えいした場合、会社の信頼性やビジネスチャンスが損なわれることがあります。
  • 副業先のトラブル
    副業の関係上、トラブルが発生した場合に、本人の勤務先として、皆さんの会社の名前が報道等されることがあります。
  • 競合や利益相反の可能性
    副業や兼業が皆さんの会社の業務と競合する場合、利益相反が生じる可能性があります。これにより、従業員と皆さんの会社の信頼関係が損なわれる可能性があります。
  • 法的な問題の可能性
    副業や兼業に関して、皆さんの会社が労働法に違反する可能性があります。

以上が、副業や兼業に関するリスクの例ですが、メリットについても考えていきましょう。

  • スキルアップの促進
    兼業や副業を通じて、従業員が新しいスキルや知識を習得することがあり得ます。これが皆さんの会社にとっても有益になる可能性があります。
  • 副業による収益の増加
    従業員が副業を持つことで、収入源を複数持つことができます。これにより、従業員の経済的な安定性が増すこともあり得ます。
  • 顧客獲得の可能性
    副業が皆さんの会社の業務とと「間接的に」関連している場合、顧客獲得の機会が増える可能性があります。

このようなメリットもありますが、デメリットにも十分な注意を払う必要があります。中小企業には兼業・副業について、なじみが少ないかもしれません。しかし、世の中の流れが、兼業、副業を推奨する方向となっています。まずは、従業員に対して適切なガイドラインを設けることが重要です。具体的には、競業する企業への副業禁止をすることで、情報漏洩、利益相反の可能性から、その理由もルールの中に記載しましょう。

さらに、兼業、副業を行うことで、疲労やストレスの増加、勤務態度の低下とならないために、兼業、副業に従事する時間の報告を求めるなど、労働時間の管理を行うことが重要です。特に主となる企業は労働時間が長いので、従業員の安全配慮義務が副業等の企業より大きいと考えられます。実際に「兼業により長時間労働をした場合労働者への各会社の法的責任」を問われる裁判がありました。

大器キャリアキャスティング他1社事件

(大阪高裁 令和4年10月14日)では、主となる会社の安全配慮義務違反が認められました。さらに、兼業先の安全配慮義務違反は認められませんでした。この裁判では労働時間が長い本業が、労働者に対する安全配慮(労働時間管理)を行うべきとなったのです。

このように、主となる会社での労働者の働きをある程度把握することも、ルール化することをおすすめします。