退職勧奨のステップと注意について

先日、退職勧奨のご相談がありました。それは次の通りです。「仕事にやる気がみられずに、指導や教育を繰り返しても改善がみられない社員がいます。評価については、能力不足と評価せざるを得ません。そのためか業績も上がらず、人事異動も検討したのですが、他部署の引き受け手がない状態です。退職勧奨を検討しております。どのようなプロセスを踏んで、どのようなステップを行えば良いでしょうか?」

退職勧奨とは、企業が社員に対し「辞めてほしい」と伝え、退職を勧めることを言います。退職を促す行為として「肩たたき」とも呼ばれています。退職勧奨は、社員の合意があって初めて退職(労働契約終了)となるもので、一方的な労働契約の解除を告げる解雇予告とは異なるものです。

解雇の際に必要とされる「就業規則の定め」や「解雇予告」、「解雇予告手当」も、必要ありません。そのため退職勧奨は、労働法による規制はなく、比較的自由に行うことが可能です。

そのため、退職勧奨を行う際には、相手の感情や状況を尊重しながら、丁寧かつ誠実なコミュニケーションを心がけることが重要です。以下に上手な退職勧奨のやり方のステップを示します。

  • 準備を整える
    退職勧奨を行う前に、事前によく考えて計画を立てましょう。退職の理由や背景を整理し、どのように伝えるかを明確にします。
  • プライベートな場所を選ぶ
    退職勧奨は感情的な要素を含むことが多いため、プライベートな場所を選んで会話することをおすすめします。周囲の人々に気を使うことで、相手がリラックスした状態で話を聞けるようになります。
  • 尊重と感謝の表現
    退職勧奨の際、相手の労働や貢献に感謝の意を示すことが大切です。その人が組織にもたらした価値や成果について具体的に話し、尊重の意を示します。
  • 理由を明確に伝える
    退職の理由を適切に伝えましょう。自分の状況や考えを率直に説明し、なるべく具体的で理解しやすい言葉を使って説明します。
  • 感情の共有
    退職勧奨には感情が絡むことが多いです。自分の気持ちや悩み、葛藤を素直に共有しましょう。相手にも感情を共感してもらうことで、理解が深まります。
  • 未来の展望を話す
    退職しても、自分の将来の展望や目標について話すことが大切です。相手に退職後の計画や目標について興味を持ってもらうことで、共感を生み出します。
  • 支援の提供
    手が退職に際して困難を感じるかもしれません。必要ならば、支援を提供する意志を示し、相手が新しい状況に適応しやすいように援助する意思を示します。
  • 冷静なトーンで進行
    退職勧奨の際には、冷静で感情的なトーンを保つことが重要です。相手が混乱したり不安にならないように、冷静かつ穏やかな口調で話すように心がけましょう。
  • 相手の反応を尊重する
    相手の反応は予測できないこともあります。どのような反応があっても、尊重し理解する姿勢を持ちましょう。感情的な場面でも、冷静な対応が大切です。
  • フォローアップとサポート
    退職勧奨後も相手の気持ちや状況をフォローアップし、必要であればサポートを続けることが大切です。新たな段階に移る際にも、連絡を取り合って適切な支援を提供しましょう。

企業から社員に、退職勧奨をするにあたっては

  • 退職金への加算
  • 再就職先の斡旋
  • 有給休暇の付与

など、社員が退職に応じるメリットを示すと共に、このまま企業に在籍することでの評価・昇進などの有無などデメリットの提示を行なうことが一般的です。

また、下記のような行為によって、社員を退職へ追い込むことは「退職強要」にあたりますので注意が必要です。元社員から裁判を起こされている事例もあります。

  • 退職しない意思を明確に示しても継続して退職を促す
  • 長時間、何度も執拗に退職勧奨を行う
  • 長時間部屋にとどめる
  • 無視や仕事を回さないなどの嫌がらせを行う
  • 退職届を出さなければ懲戒解雇になると脅す
  • 大幅な減給か退職かを迫る

退職勧奨は相手の人生やキャリアに大きな影響を与える重要な局面です。相手の感情や状況を尊重しながら、誠実なコミュニケーションを心がけることが、円満な退職プロセスを進めるための鍵となります。