雇用契約の更新は注意が必要です

有期雇用契約とは企業と労働者が期間を定めて労働契約を結ぶことです。そして、労働基準法第14条1項にてその契約期間は最大で原則3年と定められています。一般的には6ヶ月や1年が多いでしょうか。ただし、契約期間には例外があります。

  • 高度な専門知識や技術
  • 特定の経験
  • 満60歳以上

以上の条件を満たせば、5年の契約期間が認められるようになるのです。

そして、一度契約を締結すれば、その期間中はやむを得ない事由がない限りは企業側と労働者側のいずれに関わらず、原則として一方的に契約を終了することはできません。また、契約の更新を行わなければ、有期雇用契約は終了となります。

これは、雇い止めと言われており、雇い止めとは有期雇用契約労働者に対して労働契約の更新を認めないことを指しますが、法改正以降は企業側がこれを無制限に行えなくなったのです。具体的には、改正労働契約法第19条に定められています。有期労働契約の契約期間の満了時に労働者が契約の更新を希望しているとみなされる場合は、「客観的にみて合理的な理由があって社会通念上相当であると認められるとき」以外は雇止めを宣言しても無効になるとしています。

これは雇止めが無条件に行われ、労働者が突然仕事を失うのを防ぐためのものです。まず、有期雇用契約を行う場合、最初に次の更新の有無を明示する必要があります。

パターンとしては、この3つでしょう。

  1. 契約更新する
  2. 契約更新する場合がある
  3. 契約更新しない

有期の雇用契約を結ぶ際に、このことが明示されているか確認しましょう。そして、記載がなければ、契約書の改定を行ってください。さらに、②の場合は、契約更新を行うか否かの判断理由を明記します。一般的には契約更新時の業務量、勤務成績、勤務態度、能力、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況などが挙げられます。ここが具体的であればあるほど、次の雇用契約の更新時に、仮に契約を終了する場合でもトラブルになりにくいです。

また、従業員が契約を結ぶ際に「契約終了後も更新してもらえる」と期待できる場合、その期待が客観的に合理的であれば、雇用継続を保護すべきということになります。

このような従業員の期待を合理的期待と言います。合理的期待が認められる場合、解雇に関する法理の類推等により、契約関係の終了に制約がかかります。期間満了だからといって簡単に契約を終了できず、雇止めには解雇のときに近いような、社会通念上相当で客観的合理的理由が必要になるということです。

会社の立場では、有期契約社員の契約終了を考えているのであれば、この合理的期待をいかに少なくするか、ということを念頭におく必要があります。そのためには、最初の契約時から気を配ることが求められます。

合理的期待についての明確な決まりはありませんが、次のようなことから判断されます。

  1. 更新の回数や契約の通算期間
    更新回数が多い、契約の通算期間が長いということは、それだけ従業員が会社に貢献していると考えるのは当然であり、それだけその後も継続して雇用されるという期待は高くなります。
  2. 更新の手続きの厳格性
    本来は、更新の際には面談を行い、新たな契約書の作成などを行っているはずです。しかし実際には、そういった手続きがされていないケースが散見されます。契約書通りの手続きがされていないということは、雇用契約の期間も形式的なものにすぎず、実態としては引き続き雇用されるという期待は高くなります。
  3. 契約内容
    前章で示したような契約更新の基準が無かったり、曖昧だったりすると、②と同様に契約書内容が形式的なものにすぎないと判断され、更新への期待は高くなります。
  4. 従事している業務の継続性
    例えば業務の終了が明確な性質を持つ仕事の場合は、契約も終了になると予測されますが、逆に継続している仕事の場合は、更新への期待は高くなります。
  5. 職務上の地位
    係長、課長など地位がある場合は、継続性が想定されている可能性が高く、更新への期待は高くなります。
  6. 採用時や契約更新時の説明
    採用面接、更新面接の際に雇止めに関する説明が無かった場合、更新への期待は高くなります。
  7. 同種の業務についている有期契約社員への対応
    他の有期雇用社員が、特段問題無く契約更新されているような場合、更新への期待は高くなります。

このように、有期契約社員の契約終了を考えるのであれば、対象者だけではなく、他の有期契約社員の扱いと同じようにしておかなければいけないということです。有期契約社員を抱えるのであれば、全員に対して雇用契約についての面談と評価を行いましょう。