先日、以下のご質問がありました。
「管理監督者や裁量労働時間の者について、労働時間管理をしなければならないとのことですが、どのように管理すれば良いのでしょうか?」
労働時間の把握は、長時間労働を防ぎ、適正に時間外労働の管理をするために必要です。従業員の労働時間を適切に把握していないと、出社の有無や時間外労働等の割増賃金を計算するための根拠がないということになります。また、管理職者において、従業員の時間外労働を抑えるため、時間外労働等業務が集中し、過労問題が発生しています。労働安全衛生法では、管理監督者を含むすべての労働者を労働時間把握の対象とするとし、等しく長時間労働を避け、健康への配慮をするよう企業に義務付けています。
そして、企業は従業員の労働時間を客観的に把握し、一定の長時間労働などが発生した場合は医師の面談を実施すること等、以下に関して義務付けています。すべての労働者が対象となっており、もちろん、管理監督者も含まれます。
そして、面接指導などの強化が掲げられています。
具体的には以下の実施を検討してください。
- 面接指導の実施
- 労働者の申出による面接指導の拡大
- 労働時間の状況の把握
- 産業医・産業保健機能の強化
- 産業医の活動環境の整備
- 労働者の心身の状態に関する情報の取扱い
なお、労働基準法では、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有しています(労働時間の適正把握ガイドライン)。ただし、ガイドラインの対象から、労基法41条に定める者やみなし時間制が適用される労働者は除かれています。また、時間把握の方法として、自己申告を否定していません。
そして「客観的な労働時間の把握義務」があります。労働安全衛生法66条の8の3には、下記の内容が定められています。「事業者は、面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」 安衛則52条の7の3に「厚生労働省令で定める方法」として、下記が定められています。
- タイムカードによる記録
- パーソナルコンピューター等の電子計算機の使用時間の記録
- その他の適切な方法
これを受けて、労働時間の把握義務化への企業の対応方法としては、以下が考えられます。
- 「出退勤時間の記録方法の見直し」
出退勤時間の把握には、ICタイムカードを使って就労時間を打刻する方法が有効とされています。勤怠管理システムと連動させることで、出社・退社時間をPC操作履歴や入退室時間と照らし合わせた確認作業も可能となり、労働時間の把握・管理に資することになります。 - 「時間外労働の申請制度の見直し」
従業員から時間外労働の申出があった場合、管理職に時間外労働の申請・承認を得るルールを構築します。これにより、従業員の作業負担や時間外労働時間の把握が容易になります。 - 「就業状況の基準を整備」
労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指し、労働契約、就業規則などの定めにより決定されるべきものではないという原則があります。そのため、労働時間の把握・管理においては就業範囲を明確にしておかなければなりません。 例えば、職場への出社・退社、パソコンのオン・オフ、タイムカード等の打刻時間を労働時間の判断基準とするなどと定めることが大切です。 - 「管理ツールの導入」
勤怠管理のツールも利便性に優れたものが提案されています。
ICタイムカードによる勤怠管理
印字式のタイムカードでは勤怠管理システムとの連動が難しいことから、すでに備わっているICカードを利用して、出退勤時間の打刻を記録する方法です。より正確に労働時間の把握が可能となります。
クラウド型の勤怠管理システム
ICタイムカードと連動させることで、パソコン上で有給休暇・時間外労働の申請・承認も可能となるため、管理職や労務担当者の負担が軽減されます。PCへのインストールや専用機器の購入は不要なため、費用削減が可能です。