2019年4月から、働き方改革の第一歩として、労働基準法の改正により有給休暇の取得が義務化されました。年に10日以上の有給休暇が付与されている労働者には、必ず5日取得させなければいけません(労働基準法第39条7)。
さらに、コロナ禍の状況で働き方が大きく変わろうとしています。なぜなら在宅勤務が推奨され、リモートでの会議、打ち合わせが常態化して、今までとは、異なるルール等も出てきました。しかし、法改正後の有給休暇の取得義務化はスタートしております。法改正によって、備え付けが義務化「有給休暇管理簿」のチェックや、取得状況のチェックは行政の調査で細かく調べられるのです。
そんな中、最近のご相談で「有給休暇の際の賃金は、何を基準に決めるのでしょうか?」が数多くありました。この点を詳しくみていきましょう。まず、有給休暇の賃金について、労働基準法では、3つの決め方が定められており、下記の3つとなります。
(1)通常もらう予定だった賃金を計算する方法
(2)過去の平均賃金を基準に計算する方法
(3)健康保険の標準報酬日額を基準に計算する方法
どの計算方法算定方法で賃金ルールが決められているかについては基本的には就業規則に定められています。不明瞭でよくわからない場合は規則を確認することをおすすめします。以上のように、有給休暇といっても、その支払う賃金について、細部まで決めていないとトラブルが発生します。
参考となる裁判が以下となります。
日本エイ・ティー・エム事件 東京地裁 令和2年2月19日
- コールセンターのオペレーターとして働いていたAが、有給休暇を取得した際に支払われるべき賃金に未払があるとして未払賃金などを請求した
- 未払賃金に時間外手当、深夜勤務手当、シフト手当の加算が無かったので、未払賃金があると主張した
そして、裁判所は以下の判断を下したのです。
- 時間外手当、深夜手当等の割増賃金は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金としては含まれない
- シフト勤務手当については、通常の賃金を支給するものに含まれる
- シフト勤務手当に係るものが未払賃金として存在する
この裁判を詳しくみていきましょう。
所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金について、通達があり、「昭27・9・20基発675号」、「平22・5・18基発0518第1号」が示しています。「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う場合には、臨時に支払われた賃金、割増賃金の如く所定時間外の労働に対して支払われる賃金等は参入されない」とされています。これによって、時間外手当、深夜勤務手当などは「通常の賃金に含まれない」としたのです。
そして、シフト勤務手当は、出勤すれば必ず支払われることから、有給休暇の取得時に支給される「通常の賃金」として考慮されなければならないと判断されたのです。
有給休暇の賃金について、「通常支払う賃金」を支給している会社は多いです。その中に、時間外手当等を支給している会社はほとんどありません。しかし、中小企業等で、「基本給のみ支給」している会社は多いのではないでしょうか?
皆さんの会社で有給休暇の賃金の支払いが基本給だけになっていませんか?事例の裁判のように「通常支払われる賃金」には、手当が含まれるケースがあります。所定労働時間に勤務した場合に必ずもらえる手当があれば、それを含めなければいけないのです。