「試用期間」とは、一定の期間のうちに能力・適性を判断して、社員にふさわしい場合には雇用し、ふさわしくない場合には本採用拒否するという制度です。「試用期間」は、原則として、正社員を前提としています。というのも、正社員として長年雇用するからこそ「試用期間」で慎重に判断する必要があるからです。
これに対して「有期契約」の場合、短期間の契約社員であれば、「試用期間」を設定しない会社がほとんどです。なぜなら、労働契約法により、契約社員の期間途中での解雇は「やむを得ない事由がある場合でなければできない」とされています。そして、この「やむを得ない事由」があるとして、期間途中の解雇を認めた判例はほとんどありません。
判例の大半が不当解雇と判断しています。しかし、有期契約社員といえども「雇止め法理」によって更新拒絶が制限されるケースもあるため、「社員としての適性を慎重に判断したい」ということも理解できます。
契約社員をはじめとする有期契約の社員について、雇用契約の期間が満了したことを理由として更新せずに終了することを「雇止め」といいます。雇用契約(労働契約)に期間の定めがある場合には、期間が満了すれば雇用契約(労働契約)が終了することが原則です。
しかし、以下の場合は、労働者側の期待を一定程度保護するため、「雇止め法理」というルールによって一定の制限が加えられています。
- 契約更新が形骸化している
- 契約更新への期待が大きい
「雇止め法理」が適用される場合には、「解雇」と同様の制限が「雇止め」にも課されます。さらに、有期契約の社員を期間途中で解雇をする場合には、より大きな制約を課されています。民法と労働契約法では、会社が有期契約の社員を期間途中で解雇する場合に「やむを得ない理由を主張しなければならない」と定めています。
つまり、民法628条、労働契約法17条により、契約期間中に解雇するためには「やむを得ない事由」を主張しなければならないのです。
以上により、有期契約としたからといって、期間途中はもちろんのこと、期間満了時においても、会社から一方的に契約を終了することが困難な場合が少なくありません。そのため、契約の中途解約を容易におこなう目的で「有期契約に試用期間をつければよいのではないか」となります。実際に、有期契約の社員に対して試用期間をつける方法について、みてみましょう。「試用期間をつけるかどうか」は、雇用契約の内容となります。そのため、契約内容として労使間で合意をして、労働者に示す必要があります。
雇用契約の内容は、雇用契約書(労働契約書)に記載することで定めることができますが、試用期間のように、多くの労働者に適用されるルールは、就業規則に定めるのが一般的です。
「有期契約社員(アルバイト・パート・契約社員など)」「無期契約社員(正社員など)」のいずれもが社内にいる場合、正社員の就業規則の「適用範囲」を確認してください。正社員の就業規則が、契約社員などには適用されないこととされている場合があるからです。そのため、有期契約に試用期間をつけるときには、雇用形態の社員に適用される就業規則に、
次のとおり試用期間についての記載をもうけるようにしましょう。
第○条(試用期間)
- 新たに入社した社員は、原則として入社日から3か月間を試用期間とする。
ただし、上記期間が社員としての適性を判断するのに不十分であると会社が判断した場合には、最長3か月に限って延長することがある。 - 試用期間中の社員について、会社が社員としての適性がないと判断した場合には、試用期間中もしくは試用期間の終了時に、本採用せずに解雇する。
- 試用期間は勤続年数に通算する。
以上のとおり、就業規則に定めることにより、有期の契約社員であっても試用期間をつけることができます。しかし、一方で有期の契約社員の場合には、期間途中の解雇には「やむを得ない理由」が必要であると説明しました。そのため、たとえ試用期間を設定したとしても、試用期間中に本採用拒否を決定しようとすれば「やむを得ない事由」が必要となります。