有期労働契約の雇止めを行うには?

有期労働契約 (期間を定めて締結された労働契約)については、契約更新の繰り返しにより、雇用を継続したにもかかわらず、突然、契約更新をせずに期間満了で退職させることがあります。いわゆる「雇止め」という話です。

これをめぐるトラブルが大きな問題となっています。このため、雇止めのトラブルの防止や解決を図り、有期労働契約が労使双方から良好な雇用形態の一つとして活用されるように、厚生労働省から以下が出ています。

<有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準>

〇契約締結時の明示事項等

(1)使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しなければなりません。

(2)使用者が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して、契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければなりません。

(3)使用者は、有期労働契約の締結後に(1)又は(2)について変更する場合には、労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければなりません。

このようにルールが明確でも、トラブルが多く発生するのは以下のことが要因と考えられます。それは、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)は、契約期間の満了によって終了するものですが、期間の定めがあっても、実質的にこれが守られていないからです。つまり、労働契約の期間が「あってないようなもの」になっているからです。

さらに、労働契約の期間が「あってないようなもの」は、会社が雇止めするに当たっては、客観的に合理的な理由や社会通念上相当と認められることが必要とされています。つまり、解雇と同じような条件が必要となってしまうからです。

これを防ぐにはどうしたらよいでしょうか?参考となる裁判があります。

近畿大学事件 大阪地裁 令和元年11月28日

  • Aは学校法人と平成20年1月から原則として1年間の有期雇用契約を締結し、以後7度にわたり更新していた
  • 学校法人は平成27年3月13日、Aに対し、「雇用期間満了通知書」およびY理事長宛ての「要望書」(署名押印前のもの)を交付した
  • 雇用期間満了通知書には平成27年3月31日付で雇用期間満了により終了となること
  • 大学は、Aの希望があるならば、4月1日から1年間に限り、契約を更新することも検討する旨が記載されていた
  • Aは平成27年3月14日、交付された要望書に署名押印し、これを提出した
  • 学校法人はAに大学の助教に任じ、任期を平成28年3月31日とする旨の辞令を交付した
  • Aは平成28年3月、学校法人に雇用契約の更新を申し入れたが、法人は応じることなく、同年3月31日は経過した
  • 学校法人はAの平成28年4月以降の契約更新に応じなかったことが労働契約法19条に反し無効である等として裁判を起こした

そして、裁判所は以下の判断を下したのです。

  • 最後の1年は更新しない旨がうたわれている
  • 法人が契約書には、「次の更新はない」旨を明記しており、不更新の理由を説明し、Aもそのうえで契約に合意していたと判断される

最後の1年間はいわゆる「不更新条項」が付されていました。そして、裁判所は、契約の何年も続いた反復更新により生じていた更新の合理的な期待は消滅したと判断したのです。

なぜなら、最後の更新時に異議を述べず提出するなど、更新されないことを十分理解していた判断されたのです。

会社が契約書に、不更新条項、「次期の更新はない」旨を明記することが重要なポイントとなります。それとともに、更新しない理由を説明し、労働者も納得し、合意となれば更新への合理的期待が放棄されたと判断されたことになるのです。