労働契約の更新は重要です

契約社員、パート社員の場合、有期契約で締結している場合が多く、更新契約の管理があいまいになっているケースが散見されます。この場合、当初の契約から5年を超えるような契約社員やパート社員等の方がいる場合、「無期転換制度」に該当する可能性があります。無期転換制度とは、有期労働契約が反復更新されて、通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる制度です。この制度が適用となると、「雇用契約満了で雇用が終了」とはならなくなるのです。この制度がスタートしたのは、平成25年4月からなので、該当する人が現れたのは、平成30年からとなりました。無期転換ルールの導入に伴い、有期雇用労働者が無期労働契約への転換前に雇止めとなる場合が増加するのではないかとの心配があがりました。そのため、雇止めの判断に当たっては、その実際上の必要性を十分慎重に検討のうえ、対応するように、行政からの指導も出ていました。

また、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(H15厚労省告示)では、雇止めにあたり、30日前予告や理由の明示を求めています。さらに、 労働契約法第19条では、一定の条件下では雇止めが無効となるとされています。

以上のように、有期雇用の契約社員やパート社員等は、法律で保護されていることが多くあり、会社はその対応を行わないといけないのです。

この、契約更新で裁判になった事件があります。

日本通運事件 東京地裁 令和2年10月1日

  • Aは有期雇用の契約社員として労働契約を締結していた。
  • 更新を繰り返しながら5年10か月※の勤務をした。
    ※本件では、無期転換にかからない期間も含まれていて、5年10か月の期間であるが、無期転換権の発生はギリギリで発生はしていない
  • 最後の有期雇用の契約では、更新がされず、雇止めとなった。
  • Aは「この更新は不当だ」として、裁判所に訴えた。

そして、裁判は以下の判断を下したのです。

  • 有期雇用契約が更新される期待について、合理的な理由があるとは認めらない。

→更新しなくても問題ないとして、会社の主張が通った

この裁判を詳しくみていきましょう。Aは会社が無期転換の権利を行使させないために、権利取得の直前の更新を行わなかったので無効と主張したのです。確かに、無期転換権の行使前に合理的な理由なく、雇止めを実施することを法的に禁じています。しかし、この裁判は、最後の契約更新時に「本契約で契約が終了」と記載があったのです。これは、最終の契約更新時に「勤務していた営業所が閉鎖になる」可能性が高く、実際に閉鎖となったのです。最終の契約更新時に「営業所閉鎖について」の説明の文書を交付され、「これを読んでから署名するように」と指示もあったのです。そして、Aはその場で「上記説明を受けました」として、確認部分に署名して、会社に提出したのです。

Aは裁判で「従前の契約内容」で契約更新を求めたのですが、裁判所は「事業所の閉鎖撤退で、契約更新の合理的期待は無くなった」と判断し、雇止めを有効としたのです。単に「無期転換逃れ」の為、雇止めは無効とはならなかったのです。

この裁判で、会社側の主張が通ったポイントは、最終更新時のやり取りがすべてと考えられます。Aの有期雇用契約が最後の契約で「営業所閉鎖」となれば、その営業所で働いてもらう「目的」が消滅します。そのことを、事前に説明し、誤解の無いように最終更新時に、確認の署名ももらっていたのです。このことで、契約が繰り返し更新されていても、契約更新の合理的期待がなくなったと考えられるのです。仮に、この説明、署名等がなかった場合、もしかしたら裁判の結果は「逆」だったかもしれません・・・。なぜなら、有期雇用契約は多くの法律の保護がかかるからです。