休職復帰の取り扱いについて

社員が病気等で休職することがあります。病気やケガ、そしてメンタル関連の疾患など、休職理由は人それぞれです。そして、社員の休職が開始される前に、社員から上司などに主治医の診断書が提出されます。そして、上司は人事スタッフなどに診断書が提出されたことを伝え、休職が始まります。会社は休職社員が安心して療養に専念できるように、下記のことを行なっていく必要があります。

  • 必要な事務手続きや職場復帰支援の手順説明
  • 傷病手当金などの経済的な保障の情報提供
  • 不安・悩みの相談先の紹介の情報提供
  • 公的または民間の職場復帰支援サービスの情報提供
  • 休職の最長期間の情報提供

そして、休職した社員から会社に職場復帰の意思が伝えられる場合、主治医の診断書の提出を会社側は求める必要があります。そこには、診断書に就業上の配慮など、主治医の意見を記入してもらいます。なぜなら、主治医の診断には日常生活による病状の回復程度によって職場復帰の可能性を示していることが多いです。しかし、必ずしも会社が求める業務遂行能力まで回復しているとは限らないのです。ですから、あらかじめ主治医に会社で求められる業務遂行能力に関する情報を提供し、休職した社員が回復レベルに達していることを主治医の意見としてもらうことが重要です。

しかし、現場で拝見する限り、「会社で求められる業務遂行能力」を主治医が把握しているケースは少なく、一般的な生活での判断がほとんどのように感じます。さらに、この情報を基に職場復帰の可能を判断基準にしましょう。

これに関する裁判があります。

東京キタイチ事件 札幌高裁 令和2年4月15日

  • Aは水産物卸売業の会社で、期限の定めのない雇用契約を締結していた社員。
  • 生産加工員としてタラコのパック詰め作業をしていたところ、右小指をザルにぶつけ、手術を何回もするような怪我を負った。
  • その後、職場復帰を申し出たが、会社は掃除部の補助として復職してはどうかとの提案を受けた。
  • Aはこれを断ったところ、会社から解雇を言い渡された。
  • 第一審は「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないものとは認められず、会社に安全配慮義務違反は認められない」と判断された。
  • Aはこの結果について、控訴した。

そして、高裁の判断は以下となった。

  • 解雇は無効。
  • 復職可能な時期からの賃金等の支払い。
  • 会社の安全配慮義務違反があった。

高裁の判断のポイントは以下となりました。

  • 会社は、Aに清掃係への配置転換を拒否すれば解雇もあり得る旨を伝えていなかった。
  • また、製造部での業務に従事させることができない理由や、配置転換を受け入れなければならない理由等について十分な説明もしなった。

以上により、会社の提案は客観的には、その時点でAへの漠然とした意向が確認されたに過ぎないものとみるべきと判断されたのです。したがって、このような提案によって会社が解雇回避努力を尽くしたものとみることはできないと高裁は判断し、第一審の結論とは逆の判断を行ったのです。

この裁判から考えられることは職場復帰で、前の業務が難しい場合は解雇回避の意味も含めて、配転への説明は詳細を丁寧に説明することは必須です。その際に賃金、労働時間等の処遇について、確認の意味も含めて書面での取り交わしが、誤解を生まない方法となります。この機会を持つか持たないかが、会社にとって「解雇回避努力をしたか、しないか」の分かれ道となるでしょう。