セクハラとパワハラは似て非なるもの

人を困らせたり嫌がらせたりする行為を、ハラスメントといいます。ハラスメントという考え方ができてから数十年、社会的に随分と認知されるようになってきました。セクシャルハラスメントやパワーハラスメント、モラルハラスメントなど様々なハラスメント被害の考えが社会的に浸透しています。

しかし、「〇〇ハラ」という言葉が乱発され「何が何だかわからない」という声もよく聞きます。そこで、基本に戻って、セクハラ、パワハラをフォーカスして、その違いをみてみましょう。

セクハラは「男女雇用機会均等法」で事業主に対してその防止が定められています。そして、パワハラは「パワハラ防止法」で定められています。2つとも、根拠となる法律があるのです。セクハラはその内容が性的な言動というように限定されていますが、パワハラの場合は相手の人格や尊厳を傷つける言動とされていて、内容に限定はありません。セクハラの場合は、「被害者が性的に不快だった」という本人の感じ方が判定のポイントになります。

しかし、パワハラの場合は「不快だった」という訴えだけで、パワハラが行われたとは判断されません。

つまり、

  • セクハラ=受けた人の主観で判断される
  • パワハラ=受けた人が客観的なポイントの有無で判断される

大きな違いは、セクハラは主観で判断されますが、パワハラは「客観的なポイント」がない限り判断されないのです。セクハラは受けた人が性的言動等で、不快な思いをしたら「セクハラ」となります。一方、パワハラは受けた人が不快と思っても、業務上必要な措置等であれば、パワハラとはなりません。もっとも、業務上必要な措置でも、度が過ぎてはパワハラと認定されますが・・・。

では、そのポイントをみてみましょう。

パワハラを判断されるポイントは、職場において行われる

〇優越的な関係を背景※とした言動であって、

〇業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

〇労働者の就業環境が害されるものであり、

上記の要素を全て満たすものとなっています。

  • 優越的な背景とは上司から部下が主ですが、ベテランのパート社員に新任の課長が「嫌がらせを受ける」等、同僚同士や、部下から上司に対する言動でも、パワーハラスメントに該当する場合があるのです。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しないとされています。言い方を変えれば、ミスを犯した部下に注意や指導をすること自体は、許容されると考えられています。セクハラ、パワハラのこの違いをよく理解されていない人が多いです。 また、こんな話がありました。業務上必要な発言に対して「部長!それはパワハラですよ!」と言われ、その後、その上司が部下に対して委縮して、まともに支持ができなくなった。同様のお話、皆さんの会社でありませんか?

もし、こんな状況になってしまったら、業務が回らなくなってしまうかもしれません。セクハラは「性的言動」ということで、発言や行動がある意味「わかりやすい」ので、認定で悩むことは少ないです。しかし、パワハラは、その言動が業務上必要なことか、適切な範囲かどうかが重要なポイントなります。

だから、事前に「これはパワハラに該当する」といった事例を掲げ、従業員の皆さんに研修等で理解してもらうことが重要なのです。また、事業主は働く人の健康や安全を保障する義務がありますので、もしパワハラを放置すればそれらの法律に抵触することになります。

まずは、セクハラもパワハラも就業規則にもその防止を明記し、処分規定を整備しているかチェックしましょう。そして、事実が確認されたら、社内で懲戒処分を検討する流れとなります。この流れをもう一度チェックしてください。そして、迅速に対応することが重要です。ただし、判断に迷うこともあると思いますので、その際は専門家を交え、対応を検討してください。