勤務時間が長時間になると、どこかで食事をとったり、休憩する時間がほしいものです。しかし、この休憩時間は、どれくらい勤務した場合に適用されるのでしょうか?
基本的なルールがあるので復習しましょう。
労働基準法では、労働者の休憩時間について、
- 労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分の休憩をとらせる必要がある
- 労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩をとらせる必要がある
と規定されています。
では、その食事の休憩時間にも賃金は発生するのでしょうか?
食事するためとはいえ、拘束されているのだから賃金は発生するのではと考える人もいるかもしれませんが、休憩時間の賃金は反映されません。しかし、これはあくまでも「労働から完全に離れた休憩時間」のことです。「昼休みでも電話があったら対応してほしい」「休憩中に軽く仕上げて」など、わずか数分でも労働する場合は、休憩時間とはみなされません。そして、賃金が発生することとなるのです。また、「せっかくの昼休みが電話応対でつぶれた」という話を聞くこともありますが、この場合は休憩中も労働していたことになるので賃金が発生することになります。労働から完全に離れた場合、休憩時間に対し賃金の支払い義務がなくなるのです。
では、休憩時間でも賃金支払い義務がある場合はどのような場合でしょうか?移動時間や休憩時間でも、会社の重要なものを管理する場合は労働時間となります。高価な製品や商品などを運ぶ、もしくは管理している時間は労働時間となり、賃金が発生することとなるのです。しかし、高価な製品や商品などを運ぶ、もしくは管理している時間すべてが労働時間となるのでしょうか?
これに関する裁判があります。
三村運送事件 東京地裁 令和元年5月31日
- トラック運転手が未払の時間外割増賃金を求めてきた
→2年間分の未払い残業代
- 事件の争点は運転手らが、長距離運行に際し、高速道路でのサービスエリア等で滞在している時間が法律上の労働時間に該当するか否か?ということです
- 運転手らの主張は「高価な精密機器を積載しており、盗難被害防止のため常時監視する必要がある」として、会社の指揮命令下に置かれていると主張した
そして、裁判所は以下の判断を下したのです。
- 1部の未払い残業は認めたが、サービスエリア等の滞在時間などは労働時間に当たらないと判断した
この裁判を詳しくみていきましょう。
裁判所は「労働者が実作業に従事していない時間であっても、労働契約上の役務の提供が義務付けられている場合は、労働からの解放が保証されているとは言えない」としました。よって、労働者は「指揮命令下」にあり、労働時間としたのです。しかし、「高価な精密機器を監視せよ」と指示はなかったのです。更に、積載貨物が約350~500キログラムで。盗難の可能性が高いとは言えない、荷物に保険が掛けられていた、トラックの鍵を運転手が管理していれば盗難はされないと判断しました。 実際、本件サービスエリア等の運転手の過ごし方は飲酒、睡眠等で時間を過ごしており、労働から解放されていると判断されたのです。
休憩時間は「労働からの解放」がポイントとなります。ここを徹底すれば、問題は解消されるでしょう。復習になりますが、労働時間にあたるか休憩時間にあたるかは、労働者が使用者からの指揮命令を受けることなく、完全に労働から解放された状態にあると判断されたときです。自由に活動できると評価できるとなって、労働からの解放ということになるのです。